EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM  F11, 1/1250, ISO800
雪の積もった山を背景にタキシングする787。北側に山が迫る高知龍馬空港ならではのショットである。
普段高知に就航しない787が帰省客対応で充当されたのは、奇しくも雪の降った12月23日からであった。
冬の高知龍馬空港
天気予報では大寒波の恐れ

高知龍馬空港は、北は四国山地、南は太平洋に挟まれ、海あり山ありの空港である。さらに周辺には田畑が広がり、その長閑さはどこか懐かしさを感じさせる。この空港に初めて訪れたのは5年前の夏だった。空港を覆い尽くす夏草に、照りつける太陽。青い海に、発達する積乱雲。空港の所在する「南国市」の名前の通り、まさに南国の風景に魅了された。
そんなお気に入りの空港を訪れるのはいつも夏の盛りであり、冬は初である。明石海峡から淡路島を経て、徳島県の鳴門ICまでは高速道路を利用。そこからは一般道を走り、四国山地を縦断する。(勿論高速道路で高知まで行く事も可能)途中観光地である大歩危・小歩危を過ぎる頃、道路脇には数日前に降った雪が残っていた。天気予報によると数日後に日本列島を大寒波が襲うらしい。特に日本海側には大雪への注意が促されていた。雪の気配を感じながら、徳島から約4時間のロングドライブの末、高知龍馬空港に到着した。
EOS R6, EF500mm F4L IS USM + 1.4×Ⅲ F5.6, 1/200, ISO1250
高知龍馬空港到着初日。冷たい雨が降り始めた。雨は徐々に強さを増し、視程の悪化に伴いランウェイライトが点灯。大阪行きのボンバルディア機が、力強く滑走路を飛び立った。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F8, 1/800, ISO800
雨の上がった2日目の朝。JL490便の離陸と共に高知龍馬空港の1日が始まる。前日の雨のお陰で視程は良好。Wind Calmでセンターラインど真ん中でエアボーンしてくれた。朝の低い光線が注ぐ。嵐の前の静けさであった。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F7.1, 1/250, ISO100
離陸の準備を整え、RWY32へ向かうFDA機。高知龍馬空港では海に面する南側に高い防潮堤があり、その上から誘導路を見下ろした撮影が可能だ。この防潮堤に加え、堤防の水門、津波避難タワーの数々、嵩上げされた防災ヘリの格納庫は、南海トラフ巨大地震への備えである。
夜明け前から降り続いた雪
観測史上最高の積雪に

高知入りしてから2日が経ち、一番の気掛かりは天気である。予報では相変わらずクリスマス寒波の襲来を伝えていた。車にスタッドレスタイヤを履いているとは言え、不慣れな土地での降雪は不安である。また、高知県は周囲を山と海に囲まれており、道路が通行止めになれば、他の地域との行き来も困難になる。大雪の前に松山に移動するべきだろうか。
しかしそんな心配とは裏腹に、高知での雪景色を期待する気持ちもあった。高知県では愛媛県境の四国山地で積雪する事は珍しくないが、太平洋側の高知市(空港の隣市)で積雪する事は稀である。国内の県庁所在地で見た場合、宮崎市、静岡市に次いで3番目に雪が少ない都市でもある。
悩んだ結果、高知に残る選択をした。選択をしたというよりは、判断しきれずに留まったと言った方が正確かもしれない。高知市周辺では、そこまでの積雪は予想されていなかった。
その日の夜は特に冷え込んだ。車中泊をするには厳しい寒さで、午前3時頃目が覚めた。未だ雪は降っておらず、もう一度寝袋に潜る。午前5時頃外を見ると、車の周りには雪が積もり始めていた。急いで支度して空港に向かう。常宿とする道の駅から空港まで約10kmの道は、吹雪で視程が悪化し、まるで雪国の光景だった。
夜明け前に降り始めた雪は午前9時頃まで降り続き、空港を雪景色に仕立て上げた。空港隣の高知市では、観測史上最高の14cmの積雪を観測した。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM  F8, 1/250, ISO100
7時頃まで強かった雪は、8時頃には弱くなり、空も少し明るくなってきた。普段インターセクションディパーチャーのボンバルディア機も、ランウェイエンドまでやってきた。小雪舞う中、エンジンランナップを実施して離陸。
EOS R5, RF14-35mm F4 L IS USM  F8, 1/1000, ISO200 ×1.6クロップ
数分前までの降雪が嘘のように、雪雲が切れて青空が見えた。広角レンズに切り替えて雪の止んだ青空を狙う。太陽の光が入ったのはほんのひと時。まるで新千歳空港を彷彿とさせるような気象変化であった。雪景色にFDAのゴールドが絡んだのも幸運だ。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM  F8, 1/500, ISO200
雪山をバックにプッシュバックされる東京行きJL492便。雪の中の運行は慎重に、しかしスムーズに行われていた。
EOS R6, RF70-200mm F2.8 L IS USM  F2.8, 1/60, ISO12800
昼までに止んでいた雪は、夜になると再び降り始めた。多客期対応でNH567便に充当された767がRWY32に着陸した。
降り続ける雪を写し止めるのは難しい。風景写真であればストロボの発光で雪を写し止めた作品を見る。しかし航空機相手の場合、運航中の機体にカメラのストロボを発光する事は出来ない。(別の空港では着陸機に対してカメラのストロボ発光があり、撮影地が閉鎖になった例もあるようだ)今回はアプローチライトのストロボが発光するタイミングを利用し、雪を写し止める事が出来た。
雪の止んだ快晴の朝
朝の光が照らす絶景
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM  F8, 1/1250, ISO800
大雪の翌朝、いつもの堤防に立った。背景となる山には雪が積もり、朝の光が注ぐ。それはまさに絶景であった。エアボーン時は横風によりセンターを外した為、ラインナップ時のこちらのシーンを採用とした。

あとがき

いかがでしたでしょうか。
雪景色の高知龍馬空港を、地元でもない私が撮影できたことは、奇跡のように思います。
雪の中就航した787。私がもう一度撮影するチャンスは無いでしょう。
やはり、目の前の一期一会の風景を大切に記録しなければなりません。
写真は空港傍の公園、トリム広場駐車場につくられていた、小さな雪だるま。
こんな長閑な光景がまた見られる事を、願わずにはいられません。