EOS R6, RF70-200mm F2.8 L IS USM F2.8, 1/60, ISO12800 Adobe AI NR
眩いばかりに輝く航空灯火に導かれ、夜の高知に舞い降りたBoeing 787。コックピット内でのGPWSのカウントが聞こえて来そうな、正に緊張の一瞬である。

盛夏の高知龍馬空港
朝・昼・晩 787を追う
今回の旅の舞台に選んだのは、夏真っ盛りの高知龍馬空港。南側に太平洋、北側に四国山地を擁したこの空港は、特に夏が素晴らしい。青空に浮かぶ積乱雲と、それを支える鮮やかな海。そんな風景が恋しくなり、毎年自然と足が向く。
今回特に撮影したいのが、夏季の多客期限定で、1日2往復投入されるBoeing 787。15時に到着し、15時55分に出発するANA565/568便と、20時20分に到着し、翌朝7時40分に出発するANA569/562便だ。これは例年に無いパターンであり、新しい画作りが期待できる。早朝から夜遅くまで、濃密な撮影旅が始まった。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F8, 1/1000, ISO200 ×1.6クロップ
撮影初日、ANA568便に投入された787を狙う。この日は全国的に遅延が膨らみ、同便の出発も約1時間半遅延した。17時32分、RWY14から離陸する787を、夕方の光が包み込む。インターセクションディパーチャーによる、低い上がりにも感謝したい。

台風6号の接近
線状降水帯が襲う
7月28日にフィリピンの東で発生した台風6号は、非常に強い勢力で日本付近に近づいた。8月9日には九州に接近し、高知県でも雨風が強まった。台風から湿った空気が流れ込み、空港周辺に「線状降水帯」が発生したのである。雨雲レーダーを見ると、真っ赤な細長いエコーが南北に連なっている。大雨警報が発令され、スマホからはエリアメールが何度も鳴った。これは撮影どころでは無い。
そして空港では、豪雨が視程を悪化させ、着陸が難しくなっていた。悪天候時に、誘導電波を使って滑走路に着陸する「ILS」は、RWY32に設置されているものの、南風が強くて使えない。逆側のRWY14に旋回・着陸するには、滑走路を前もって目視する必要があり、線状降水帯の真っ只中では難しい。多くの便が着陸を諦めて、出発地に戻って行った。
EOS R6, RF50mm F1.2 L USM  F1.2, 1/200, ISO12800  Adobe AI NR
20時頃、雨が弱まるタイミングを見計らい、空港に向かった。時折激しい雨が降るものの、視程は徐々に回復している。風は150°から26ノットで、使用滑走路はRWY14だ。進入灯台が回転し、雨を照らす幾つもの光が、787の到着を待ち構える。
ANA569便は、土佐湾から高知市上空に入り、関西アプローチから高知タワーにハンドオフされた。地上からは全く見えないが、確実に空港に近づいている。無線から聞こえるパイロットと管制官の声は、いつも通り冷静だ。RNP Y RWY14アプローチの航路を、正確にトレースして右旋回している。そして、雲の中から小さな光が現れた。
コックピットからも、滑走路が見えたに違いない。光は徐々に大きくなり、存在感を増してゆく。思いのほか冷静にシャッターボタンを押した。そして逆噴射の音が響き、無事に着陸した事が分かった。最後の交信が終わり、労いの言葉を掛け合うパイロットと管制官。台風の長い1日が、幕を下ろした瞬間である。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F8, 1/800, ISO400
翌日も朝から雨が降り続いた。雨雲の合間、ほんの一瞬の隙をついて、東京行きの787が離陸した。
EOS R5, RF14-35mm F4 L IS USM  F8, 1/1000, ISO200
雨が止んだ朝、天気の境界に現れたダブルレインボー。数日ぶりの日差しの到来を、静かに祝福しているようだ。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F8, 1/800, ISO500 ×1.6クロップ
視程が50kmを超えた朝、三宝山より久枝を望む。太平洋をバックに、低い上がりの787が共演した。
EOS R5, RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM F8, 1/800, ISO400 C-PL
夏の高知では珍しい、RWY32からの離陸。離着陸の方向により異なる一面を見せてくれるのも、高知龍馬空港の魅力。
EOS R5, RF24-70mm F2.8 L IS USM  F8, 1/1000, ISO500 C-PL
外にいるだけで、汗が噴き出す夏の午後。トリトンブルーの787は、夏空に良く映える。