EOS R5, EF500mm F4L IS II USM +1.4x III  F8, 1/1600, ISO800
冬の朝日を正面から受けて機首を上げる787。そんな作品のイメージを、何年も前から抱いていた。しかし、冬の低い光線を背に離陸機に正対できる場所は、全国を探しても少ない。ましてや「787が早朝に離陸する」という条件まで付くと、撮影機会は限られる。
2024年1月、ついにチャンスが訪れた。高知龍馬空港RWY14から離陸する787に、朝の光が注がれる。10kt近い背風による低い上がり、787らしさを表現するのに、申し分無かった。
冬の高知龍馬空港
787の活躍を追う
EOS R5, RF70-200mm F2.8 L IS USM  F8, 1/800, ISO250
朝の光を浴びてANA562便がRWY32にラインナップする。流麗なノーズ形状に、特徴的なシェブロンノズル。反り上がったレイクド・ウィング・チップが美しい。
EOS R5, EF500mm F4L IS II USM +1.4x III  F5.6, 1/800, ISO250 ×1.6クロップ 
前便の到着遅れにより、約1時間遅れての離陸となったANA568便。雲の隙間から届いた光が機体を照らした。2,500mの滑走路は山側から海側に向けて下っており、7.3mもの高低差がある。
EOS R5, RF14-35mm F4 L IS USM  F8, 1/1600, ISO400
3連休初日、空港隣の公園は沢山の子どもたちで賑わっていた。顔の写り込みを懸念したが心配は無用。皆の視線は787に釘付けだ。
夕陽へ続く海岸線
遠い平安の世を想ふ
EOS R5, RF70-200mm F2.8 L IS USM  F8, 1/1000, ISO320
土佐の山々に夕陽が沈む頃、ANA567便がRWY32に着陸した。空港西側にある南国市前浜は、平安時代の貴族、紀貫之が4年間の国司の赴任を終え、都に帰る際に立ち寄った場所。この旅は、太平洋から紀伊水道を抜け、都に至るまで、55日間の長い船旅であった。旅で起きた出来事を記した、「土佐日記」は、日本最古のかな書き日記として、現代に知られている。
まことにて名に聞くところ羽ならば飛ぶがごとくにみやこへもがな
(ここの地名の羽根が本当の烏の羽ならば、その羽に乗って、恋しい都へ早く飛んで帰りたい)
前浜を出発した紀貫之たち一行が、室戸岬の少し手前にある「羽根岬」にて読んだ歌。千年の時を経て、高知から伊丹まで、たった45分のフライトで結ばれている事は、非常に感慨深い。
EOS R5, RF70-200mm F2.8 L IS USM  F3.2, 1/10, ISO800
月のない新月の夜。東京へ向かう787が、ランウェイライトに浮かび上がる。Line up and waitを期待したが、既に離陸許可が発出されている。ランウェイへの回頭が完了する、ほんの一瞬のチャンスを見逃さなかった。